子ども服作家“クチル・ポホン“

井上アコさん

2012.9.18 UP

ほんのちょっとでも、
お母さんと時間や気持ちが共有できたとき
子どもは本当にいい笑顔をしてくれるの

今回は子ども服作家“クチル・ポホン“として活躍中の井上アコさんのアトリエにお邪魔しました。名東区の公園が目の前に広がるマンションの一室に、ミシンが一台。季節によって変わる景色を見ながら、縫い物を楽しんでいる暮らしはとても穏やかに感じました。ご自身にお子さんはいないながら、ステキな服や刺繍の活動を通して子どもを引き付け、お母さんや子どもの気持ちが分かるのか聞いてみました。

―なぜ、子ども服作家になろうと思ったのですか?
アコさん:服飾の専門学校を卒業して、アパレル関係の仕事をしたり、雑貨店で働いたり、友達と二人でウェディングドレスのオーダー店をしたりしました。その後、自分にとってとても重要な、転機にもなる出来事が立て続けに起こり、“本当に自分がやりたいことをやっていこう”と考えるようになったのです。それで出た答えが、子ども服を作ることでした。子ども服の、部屋に掛けてあるだけで雑貨っぽくてカワイイ感じも大好きで。
自分には子どもはいないんですけどね。(笑)



―てっきり、お子さんがいらっしゃるからこその活動かと思っていました。
アコさん:自分に子どもがいなくても、以前こどものいる友人宅の一角をアトリエとして使わせてもらっていたり、姪っ子と甥っ子が身近にいたり、とにかく子どもと触れることが多いです。子どもを見ている、というか観察するのが好きで、なぜか子どもも私のことを大人扱いしてくれず、同じ目線で話しかけてくれます。ライブ刺繍などの活動を通しても、子どもと向き合うことが多いからでしょうか。

―ライブ刺繍とはどのような活動なのですか?
アコさん:子どもが描いた絵を、その子と家族の前で刺繍するのです。絵に忠実に、子どもの使った色鉛筆の色が刺繍糸にない場合は、「この色でもいいかな?」とちゃんと了解を得るし、絵と違うことを基本、勝手にはしません。その子の描いた絵をリスペクトして、忠実に。ただ、選んでもらう色の組み合わせは予め私が用意しておくので、出来上がった作品はちゃんと子どもと私のコラボレーション作品になっているわけです。


―刺繍中、子どもはどのようにして見ているのですか?

アコさん:私は下絵を描かずに縫うことができるので、刺繍をしている間は子どもと向き合う時間です。とは言っても、子ども扱いはせず大人に話すのと同じような口調で自然に接しています。子どもはいろいろな話をしてくれますよ。

―なぜこの活動を続けているのですか?
アコさん:不思議なのですが、子どもは自分の描いた絵が刺繍されてカタチになった時に、ビックリするほど心を開いてくれるのです。それまでお母さんの後ろに隠れていた子も、刺繍がだんだん進んでくるうちに目の前で自分から話しかけてきてくれたりします。
絵を通して、自分が認められている感じがするのだと思います。
今まで、私の作る服を通して「着ていて楽しくなる服」、「子どもとママをつなげる暮らし」を提案していたけれど、ライブ刺繍の活動が一番そのお手伝いが出来ているような感じがするのです。

―そう感じるのはなぜでしょう?
アコさん:わたしは、小さいころお母さんに理解されなかったひととなぜか縁があり、“母と良い関係を作る会”を発足したこともあります。(笑)
でも、つきつめてみると、「やっぱりいくつになってもお母さんに認められるとうれしいし、わかってほしい」。その気持ちは、ちいさいころ、お母さんとの時間やさまざまな気持ちを共有することで、微力ながら解決すると思うのです。
小さなことでも良い、自分を尊重して、そのためにお母さんが何かしてくれたという経験が大切な気がします。結局は私も、子どもの頃に親がしてくれたこと、認めてくれたことが底力となっているのだと感じているのです。

―これから、どんな活動をしていきたいですか?
アコさん:ライブ刺繍で全国行脚をしたいです。刺繍が出来上がった時、「デキタ!!!」って子どもとお母さんが喜ぶ姿が大好き。私は大好きな刺繍を通して子どもとお母さんが、少しでも何かを共有するきっかけ作りをしていきたいのかも知れません。


アコさんの作る子ども服は私も大好きです。てんとう虫が隠れていたり、ポケットからひまわりが出ていたり、遊び心がさりげなくカワイイ。そして、アコさんの人柄もその通り。今までの辛い出来事や苦労などを糧にして、強く進んできたアコさんですが、ご自身も言うようにとても素直で無邪気な印象を受けました。でもやはり、底力に溢れるパワフルな人柄に、大人も子どもも引き付けられるのも納得です。

おわり
おすすめ絵ほん

みんな おいで

(作)あまんきみこ
(絵)川上越子
(出版)福音館書店
小さい頃、買ってもらっていた“こどものとも”シリーズの絵本は、ほとんど実家に大切にとってあるとのこと。昭和レトロ感たっぷりですが、どこか北欧の雰囲気も漂う。女の子のワンピースのデザインや色が参考になることもあるとか。確かに、大きなボタンにぷっくりポケット、女の子のカワイイが詰まっています。お花が沢山出てきますが、イキイキとしすぎて、少し恐いくらいです。大人になってから読むのと、子どもが感じることにギャップがありそうな、ファンタスティックな絵本です。

小さい頃から指先が器用で、お裁縫が大好きだったアコさん。東京の服飾専門学校卒業後、アパレル系の仕事を経て、友人と二人でウェディングドレスオーダーを始める。その後、様々な転機が訪れ、本当に“自分がやりたいこと“を思ったとき、子ども服を作りたいと意志を固め、今、こども服作家:“クチル・ポホン“として活動中。「ママとわたしのドレスブック」や「小さな女の子のドレスブック」を出版し、子どもの絵を目の前で刺繍する「ライブ刺繍」など、親子で楽しめる活動をしている。